ASSET / MINE
鉱山・坑道点検|人が入れん空洞を、先に飛んで確かめる
発破のあとの採掘空洞、深い立坑、露天掘りの高い残壁、鉱さいをためる堆積場。鉱山には「人が近づいたらいけん場所」がようけあるんよ。ドローンがその場所の目になれるところと、岩の浮きを落とすように人と機械にしかできんところを分けて見ていこうや。
このページを読む順
鉱山は、どこから危のうなるんか
鉱山は、掘るたびに形が変わる「生きた構造物」じゃ。地下では天盤や側壁からの落石・肌落ち、支保(ロックボルト・金網・吹付けコンクリート)の劣化、掘った空洞が計画より大きく崩れる過掘り。露天掘りでは残壁の落石やすべり。そして鉱山の外で一番大きな災害につながりうるのが、鉱さいをためた堆積場(テーリングダム)の決壊なんよ。
| 部位 | 起こりやすい変状 | 見落とすと |
|---|---|---|
| 坑道の天盤・側壁 | 浮き石、肌落ち、ひび割れ、内空の縮み | 落盤による人身事故、坑道の閉塞 |
| 支保 | ロックボルトの腐食・破断、金網のたるみ、吹付けの剥離 | 支保が効かんまま人や車両が通る |
| 採掘空洞(ストープ) | 過掘り・掘り残し、壁の崩落 | 鉱石の希釈、次の発破の失敗、隣の坑道への影響 |
| 立坑・鉱石立坑 | 壁の崩落、閉塞(詰まり)、設備の損傷 | 巻上げの停止、生産の停止 |
| 露天掘りの残壁・ベンチ | 落石、き裂、すべりの兆候 | 残壁の崩壊、重機・人の被災 |
| 鉱さい堆積場 | 堤体の変形・浸透・ひび割れ、水位の上昇 | 決壊、下流の大規模な被害 |
2019年、ブラジル・ブルマジーニョの鉱さいダム決壊では、250人を超える命が失われた。これをきっかけに、鉱さい堆積場の管理の国際基準(GISTM)が2020年にまとめられ、日々の監視と記録の重みはぐっと増したんよ。
いまの点検と、その痛み
坑内では、保安の係員が決まった間隔で坑道を回って目で見て、浮き石をこじ落とし(棒や専用の重機で叩き落とす)、支保の状態を確かめる。人が入れん空洞は、空洞計測システム(CMS)と呼ばれるレーザースキャナを棒の先に付けて入口から差し込み、形を測ってきた。露天掘りでは測量と目視、堆積場では水位計や変位計と巡回が中心じゃ。
| 方法 | 得意 | 痛み |
|---|---|---|
| 坑内の巡回・目視 | 岩の様子を直接見て、叩いて確かめられる | 人が危ない場所に立つ、暗くて細部を見落とす |
| 空洞計測システム(CMS) | 人が入らずに空洞の形が測れる | 入口から見える範囲だけで影ができる、設置に時間がかかる |
| 測量(トータルステーション・地上スキャナ) | 精度が高い | 人が測点に立つ必要、時間がかかる |
| 露天掘りの目視・測量 | 全体の形を押さえられる | 高い残壁の上部は遠い、残壁の近くは危ない |
| 堆積場の計器と巡回 | 水位・変位の連続監視 | 計器は点の情報、広い堤体の全体は見えん |
鉱山の痛みは、時間と危険が直結しとることじゃ。発破のあとはガスが抜けるまで入れん。空洞の形が分かるまで次の作業が進まん。急ぐほど人が危ない場所に近づく。「速く知る」と「安全に知る」を両立させるのが、鉱山の点検の課題なんよ。
ドローンで、こう変わる
坑内で使うドローンは、ほとんどが LiDAR で周りの形を測りながら自分の位置を推定する(SLAM)機体じゃ。GPS も操縦の電波も届かん所へ、自分で飛んで行って測り、戻ってくる。地上では、露天掘りや堆積場を写真測量で広く速く押さえるんよ。
| やり方 | 機体・センサーの例 | 向いとる場面 |
|---|---|---|
| 空洞の3D計測 | LiDAR SLAM の自律機(例:Emesent Hovermap、Exyn 系) | 発破後のストープ、CMS で影になる所、過掘りの確認 |
| 坑道の近接点検 | 球体ケージ付き機体+照明(例:Flyability Elios 3) | 鉱石立坑、立坑の壁、狭い坑道、支保の状態 |
| 坑道の繰り返し計測 | LiDAR 搭載機(手持ちや車載と使い分け) | 内空の縮み(変位)の経年比較 |
| 露天掘りの測量 | GNSS 機+写真測量・LiDAR | 残壁の形状、き裂の把握、鉱石の山(ストックパイル)の体積 |
| 堆積場の監視 | 固定翼・マルチコプター+高画素・赤外線カメラ | 堤体の変形・ひび割れ・浸み出しの把握(衛星データと組み合わせる) |
坑内の飛ばし方の基本は、入口から見通しの外へ自律で入り、決めた時間で必ず戻ることじゃ。電波が切れても、機体は自分で作った地図を頼りに帰ってくる。戻れんかもしれん空洞へは、機体を失うことも前提に計画する。人が失われるより、ずっとええけぇね。
環境の壁を越える
坑内は、ドローンにとって最も厳しい環境の一つじゃ。GNSS も電波も届かん、真っ暗、狭い、粉じんが舞う。発破のあとは有毒ガスや酸欠の心配があり、石炭の鉱山ではメタンによる爆発性雰囲気が付きまとうんよ。
- 非GPS環境:LiDAR SLAM で自己位置を推定し、通信が切れても自律で戻れる機体を選ぶ。非GPS環境
- 暗所:機体の照明と、明るさに頼らん LiDAR の組み合わせで飛ぶ。暗所
- 狭小空間:坑道の断面と立坑の径を確かめ、衝突しても落ちにくい機体を選ぶ。狭小空間
- 粉じん・煙:発破直後は粉じんで LiDAR もカメラも見えにくい。換気で落ち着くのを待つ。粉じん・煙
- 酸欠・有毒ガス:発破後のガスが抜ける前に、人の代わりに状況を見に行ける。ガス検知器を積む例もある。酸欠・有毒ガス
- 爆発性雰囲気:石炭の鉱山のようにメタンが出る所では、防爆の認定を受けた機器しか使えん場所がある。一般的なドローンは使えんと考える。爆発性雰囲気
画像から、判断へ
鉱山のドローンの成果は、写真より点群が主役じゃ。空洞の点群を設計の形と重ねれば、過掘りと掘り残しが一目で分かる。前回の坑道の点群と重ねれば、内空がどれだけ縮んだかが分かる。ほいでも、支保を増やすか、人を入れてええかを決めるのは、岩盤の技術者と保安の責任者なんよ。
| 工程 | 機械ができること | 人が持つ責任 |
|---|---|---|
| 3D化 | LiDAR の点群から空洞・坑道のモデルを作る | 欠けや誤差の確認 |
| 設計との比較 | 過掘り・掘り残しの量と位置を計算 | 発破設計の見直し |
| 経年比較 | 内空の縮み、壁の変化を差分で出す | 変化の意味の解釈、監視を強めるかの判断 |
| 体積計算 | 採掘量・ストックパイルの量を計算 | 生産記録や鉱量との照合 |
| 判定 | — | 支保の追加、立入りの可否、作業の中止の判断 |
鉱山は、もともと全部を一つの座標で管理しとる世界じゃ。ドローンの点群をその鉱山座標に必ずそろえて残せば、発破の設計、地山の監視、生産の記録が一つのモデルでつながる。「測った」で終わらせず、「同じ座標に積む」ことが大事なんよ。
ルールと責任
日本では、鉱山の保安は鉱山保安法のもとで、鉱業権者が危険を洗い出して対策をとることが求められ、経済産業省の産業保安監督部が監督しとる。日本で動いとる鉱山には石灰石などの露天掘りが多いとされ、ドローンの出番は測量と残壁の監視が中心じゃ。
飛ばす側では、露天掘りや堆積場の上は屋外なので航空法の対象になる。坑内のように囲まれた空間での飛行は扱いが変わりうるけぇ、事前に確かめようや。どちらでも、鉱山の保安規程と作業許可の中にドローンの飛行を書き込んでおくことが大事なんよ。
海外では、米国は MSHA(鉱山安全衛生局)が坑内で使う機器の防爆などを定め、オーストラリアでは州の鉱山規制当局と、航空の CASA の両方のルールがかかる。鉱さい堆積場には GISTM が国際的な基準として広がっとる。国ごとの飛行ルールは各国の規制で比べられるよ。
出典:国土交通省|無人航空機の飛行ルールドローンにできんこと
- 浮き石を落とす:こじ落としは、人と専用の重機の仕事じゃ。ドローンは浮き石の場所を見つけるところまで。
- 岩の中の状態:岩盤の応力や内部のき裂は、表面の形からは分からん。計器や地山の調査が要る。
- 爆発性雰囲気のある坑内:メタンの出る場所では、認定を受けた機器しか使えん。一般的なドローンは使えん。
- 発破直後の濃い粉じん:LiDAR もカメラも見えん。換気を待つしかない。
- 長時間の飛行:電池で飛べる時間は短く、広い坑内を一度に回ることはできん。
- 判定と責任:支保の追加、立入りの可否、堆積場の安全の判断は人じゃ。
2035年、点検が実現した世界
発破のあと、ガスが抜けるのを待つ間に、ドローンが空洞に入って形を測り、戻ってくる。人が坑内に戻る頃には、過掘りの量と、次の発破の修正案と、支保を足すべき場所が画面に並んどる。坑道は毎週同じ経路で測られ、内空の縮みは数ミリ単位で追いかけられとる。
鉱さい堆積場は、衛星と地上の計器とドローンで、毎日どこかが見守られとる。「異常なし」を積み重ねた記録が、下流に住む人への説明になる。これは編集部の見立てじゃけど、浮き石を落とし、支保を打つ仕事は、その時代も人と機械が担っとるはずなんよ。
PREPARATION
飛ぶ前の準備チェック
チェックはこの端末(ログインすれば共通アカウント)に保存されるよ。学習用の確認で、許可や安全の証明ではないけぇね。
この対象の事例
- オマーンの地下鉱山:発破後の採掘空洞をLiDARドローンで計測Oman · 2024
- LKABキルナ鉱山:鉱石シュート(オアパス)の点検を8時間から20分にKiruna, Sweden
関連する論文
- Receding Horizon "Next-Best-View" Planner for 3D ExplorationBircher, A. 2016
各国の資料(44)
- 「ここが鉱山?」ドローンを飛ばし無人削岩機で掘る[スマートマイニング報告②]KR · 머니투데이방송(MTN)
- 露天鉱山のドローン動態監視に技術基準CN · 科技日报
- 米易:700万件のデータで鉱山の立体安全網CN · 川观新闻(四川日报)
- タゾン鉱山での無人機による採掘管理の研究VN · VNUHCM Journal of Engineering and Technology(ホーチミン市国家大学)
- Terra LiDAR One ドローンを鉱山測量で試験ID · Gizmologi(技術メディア)
- BHPオリンピックダム鉱山、Hovermapを日常業務に導入AU · Emesent
- Emesent(CSIRO発ベンチャー)AU · CSIRO
- RocketDNA、CASAの自律運用承認を取得(DJI Dockで豪州初)AU · RocketDNA
- OceanaGold、リーフトン鉱山の修復事業でドローン測量NZ · DroneDeploy
- ジャイアント鉱山の環境修復で地下調査を支えるドローンCA · WSP
- カナダのインフラを見守るドローンCA · The Globe and Mail (sponsored, GE)
- 地下の鉱山作業員をより安全にする自律技術CA · CTV News Northern Ontario
根拠を確かめる
制度・数値・事例は下の資料を参照しとる。未来像と設計の提案は、編集部の独自の見立てじゃ。
- 北海道産業保安監督部|令和8年度 鉱山保安監督のガイドライン経済産業省 北海道産業保安監督部 · 本文確認
- MSHA: Approval and Certification CenterU.S. Department of Labor · 本文確認
- Global Industry Standard on Tailings ManagementICMM, UNEP and PRI · 本文確認
- ICMM: About TailingsICMM · 本文確認
- CASA: Drones (Know Your Drone)Civil Aviation Safety Authority (Australia) · 本文確認
- 国土交通省|無人航空機の飛行ルール国土交通省 航空局 · 確認待ち
参照確認日: 2026-10-22