Airffic Inspectionドローン点検の未来ガイド

ENVIRONMENT / EXPLOSIVE

爆発性雰囲気|火花ひとつが命取りになる場所で、ドローンはどう飛ぶんか

石油・化学プラント、タンク、下水道、炭鉱。可燃性のガスや粉じんがある場所では、ドローンそのものが「着火源」になりうるんよ。危険場所の区分(Zone 0/1/2・防爆)と、ほとんどの点検ドローンは防爆じゃないという現実、そしてガス測定と作業許可の段取りを整理しようや。

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何が起きるんか

爆発には、燃えるもの(可燃性ガス・蒸気・粉じん)、酸素、着火源の3つがそろう必要がある。ガスは空気と混ざって、ある濃度の範囲(爆発下限界 LEL〜上限界 UEL)に入った時だけ燃える。プラントでは燃えるものと酸素は消しきれんけぇ、着火源を持ち込まんことで安全を守っとるんよ。ドローンは、その着火源の塊じゃ。

ドローンの部位着火のしかたひとこと
リチウムイオン電池短絡・損傷・過充電で発熱、熱暴走で発火エネルギーが大きく、防爆化が一番むずかしい
モーター・ESC(速度制御器)電気火花、巻線や素子の発熱ブラシレスでも、配線や接点の火花は残る
プロペラ・機体回転や気流による静電気、落下時の衝撃火花樹脂の部品は帯電しやすい
ライト・センサー・無線機高温の表面、回路の火花強い照明ほど表面温度に注意
墜落電池の破損、金属どうしの衝突「普通に飛んどる時」より危ない瞬間
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危険場所の区分と、防爆のしくみ

国際規格 IEC 60079 シリーズと欧州の ATEX 指令では、爆発性雰囲気がどれくらいの頻度・時間で現れるかで場所を区分する。ガスは Zone 0/1/2、粉じんは Zone 20/21/22。日本でも同じ考え方で、ガスについて0種場所・1種場所・2種場所と呼んどる。区分ごとに、持ち込んでええ機器の防爆の水準が決まるんよ。

区分(ガス)日本の呼び方爆発性雰囲気の現れ方例
Zone 00種場所連続して、または長時間・頻繁に存在する可燃性液体のタンク内部の気相部
Zone 11種場所通常の運転中にときどき生じうる出荷・充填口、ベント口の周り
Zone 22種場所通常は生じず、生じても短時間フランジやポンプの周りなど、漏れた時だけ
非危険場所非危険場所対策をとる必要があるほどの頻度では生じない区分外の通路、事務所など

防爆の方法には、火花のエネルギー自体を着火できんほど小さくする本質安全防爆(Ex i)、内部で爆発しても外に火を出さん耐圧防爆(Ex d)、きれいな空気で内部を満たす内圧防爆(Ex p)などがある。ほかに、ガスの種類(グループ IIA/IIB/IIC)と、機器の表面温度の上限(温度等級 T1〜T6)も合わせる必要がある。日本では、危険場所で使う防爆電気機器は型式検定に合格したものを使うのが原則じゃ。

点検ドローンのほとんどは、防爆じゃない

市販の点検ドローン(例:屋内用の球体ガード付き機、産業用マルチコプター)は、ほぼすべて防爆認証を持っとらん。大きな電池と高出力のモーターを本質安全にするのは物理的にむずかしく、耐圧容器で包めば重すぎて飛べん。防爆をうたう機体の開発例はあるが、まだごく少数じゃ。だから実務は「防爆の機体で飛ぶ」より「爆発性雰囲気がない状態をつくって・確かめて飛ぶ」が基本になっとる。

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どの現場で出会うか

爆発性雰囲気は、プラントの装置まわり、工場配管のフランジやバルブ、貯槽・タンクの内部と屋根の上、メタンや硫化水素が溜まる下水道管路、メタンや炭じんのある鉱山・坑道で出会う。どれも「人が入るのが危ない」場所じゃけぇドローンに期待がかかるんじゃが、同時に、ドローンを入れる前の段取りが一番重い場所でもあるんよ。

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機体と運用の選び方

やり方中身向いとる場面注意
停止・ガスフリー後に入る設備を止め、パージ・換気・洗浄し、ガス測定で安全を確認してから飛ぶタンクやボイラーの開放点検、定修測定は飛行中も続ける。スラッジや配管の残りから再発生しうる
危険場所の外から見る区分の外(非危険場所)から望遠・赤外線・距離をとって撮る稼働中の設備の外観、フレアスタック風下に流れたガスで区分の外も変わりうる
条件付きで区分内を飛ぶ連続ガス検知で爆発性雰囲気がないことを確かめながら、運用ルールで飛ぶZone 2 の上空など、事業者の判断と社内基準がある場合機体自体は防爆じゃない。検知・中止の手順が命綱
防爆の地上ロボット・固定センサー防爆認証のある移動ロボットや据え付けカメラで日常巡回稼働中の Zone 1/2 の定期巡回飛べんぶん、届く範囲は限られる
  • 区分図を先にもらう:飛行ルートを、事業者の危険場所区分図に重ねる。離着陸場所と電池交換場所は必ず非危険場所に置く。
  • 作業許可(パーミット)に乗せる:ドローンは「火気・電気機器の持ち込み」として扱われることが多い。作業許可書に機体・電池・飛行範囲・時間を書き、承認を受けてから飛ぶ。
  • ガス測定は、入る前・飛ぶ間・終わるまで:可燃性ガス(LELに対する割合)・酸素・硫化水素や一酸化炭素を測る。多くの現場では、可燃性ガスがLELの一定割合(例:10%)を超えたら中止など、社内基準で判定しとる。
  • 中止基準を先に決める:ガス警報が鳴ったら、機体はどこへ降ろすか。電池の入った機体を区分内に不時着させる場合の回収手順まで決めておく。
  • 電池を管理する:損傷・膨らみのある電池は使わん。充電は区分外で。墜落した機体の電池は熱暴走を疑う。
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安全と法規

日本では、労働安全衛生法と労働安全衛生規則が、爆発・火災のおそれのある場所での電気機械器具の使用を制限し、防爆構造の機器は型式検定の対象になっとる。石油コンビナートなどのプラントでのドローン活用については、消防庁・厚生労働省・経済産業省(石油コンビナート等災害防止3省連絡会議)がそろってガイドラインを出しとって(2019年に初版、2022年にVer3.0)、危険区域の扱いや運用の条件が示されとる。屋外の飛行には航空法の飛行ルールも別に効く。航空・労働安全・消防(危険物)の手続きを、別々に確かめようや。

欧州では ATEX 指令が機器(2014/34/EU)と職場(1999/92/EC)の両方を定め、国際的には IECEx が防爆機器の認証制度を運営しとる。関連:酸欠・有毒ガス、狭小空間、高温、各国の規制。

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まだ越えられん壁

  • 飛べる防爆ドローン:電池・モーター・無線を本質安全や耐圧で包むと、重さと飛行時間が成り立たん。認証まで取った機体は、まだごく少ない。
  • 稼働中の Zone 0/1 の中:止めずに中を見たい、という要望は強いが、今は止めてガスフリーにするのが基本。
  • ガス測定の遅れと偏り:検知器の応答には時間がかかり、プロペラの風でガスがかき混ぜられる。「測った場所・時刻」と「機体のいる場所・時刻」は同じとは限らん。
  • 墜落後の回収:区分内に落ちた機体を、誰がどうやって安全に取りに行くか。手順が整っとらん現場はまだ多い。
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2035年、止めずに見るプラント

軽い本質安全の電池と電装が実用になり、Zone 2 の上空を、防爆の認証を持つ機体が日常の巡回で飛んどる。機体はガス検知器を積み、漏れを見つけたら自分で区分の外へ退避し、場所と濃度を運転員に知らせる。Zone 0 のタンクの中だけは、相変わらず「止めて、抜いて、測ってから」——その線引きがはっきりしとることこそが安全なんじゃ、というのが編集部の見立てじゃ。

この条件に出会う点検対象

根拠を確かめる

制度・数値・事例は下の資料を参照しとる。未来像と設計の提案は、編集部の独自の見立てじゃ。

参照確認日: 2026-10-22