Airffic Inspectionドローン点検の未来ガイド

TECHNOLOGY / 02

赤外線サーモグラフィ|「温度の絵」は、条件がそろうて初めて語る

赤外線カメラは、目に見えん「熱」を写す。太陽光パネルのホットスポット、外壁タイルの浮き、断熱の欠け、電気の接続部の発熱。ほいでも写っとる色は、温度そのものとは限らんのよ。物理と撮る時刻から、正直に見ていこうや。

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赤外線カメラは、何を見とるんか

温度のあるものは、すべて赤外線を出しとる。点検用ドローンの熱画像カメラの多くは、波長おおむね8〜14µmの長波長赤外(LWIR)を、冷却の要らんマイクロボロメータで受ける。カメラが受け取るのは「温度」ではなく放射のエネルギーで、それを温度に換算しとるだけなんよ。

T refl T obj ε τ · T atm IR 8–14 µm (1−ε)·W(T refl) ε·W(T obj)
カメラに届くのは、対象が出す放射 ε·W(T obj) と、周り(空や太陽、近くの建物)の放射が面で反射した (1−ε)·W(T refl) の合計に、大気の透過率 τ がかかったもの。放射率 ε が低いほど、反射の割合が増える。

じゃけぇ、正しい温度を出すには少なくとも放射率、反射温度、距離と湿度(大気)をカメラに教える必要がある。点検で大事なのは、多くの場合「何度か」より「周りと比べて何度違うか(ΔT)」の方じゃ。同じ材料・同じ向きの面どうしで比べれば、放射率や反射の影響はかなり打ち消せるんよ。

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放射率と反射のわな

表面放射率の目安注意
コンクリート・モルタル・タイル高い(0.9前後)比較的測りやすい。濡れや汚れで変わる
塗装面(色は問わん)高い(0.9前後)可視の色と赤外の放射率は別物
ガラス(太陽光パネル表面も)高めじゃが鏡のように反射する空・太陽・機体自身が映り込む
錆びた鉄・酸化した金属中〜高むらがあり、場所で違う
磨いた金属・新しいアルミ・亜鉛めっきとても低い温度はほぼ測れん。映り込みが主役になる

放射率は、見る角度でも変わる。面に対して寝かせて(浅い角度で)見るほど放射率は下がり、反射が増える。屋上から見下ろすように撮った外壁や、斜めから撮ったパネルの温度は、正面から撮ったものと比べられんことがあるんよ。もう一つ、晴れた空は赤外では非常に冷たい。ガラスや金属に空が映ると、実際より冷たく写るけぇ注意じゃ。

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日射と時刻:いつ撮るか

赤外線点検の成否は、半分は撮る時刻で決まる。熱の違いは、熱が流れとる時にしか現れん。外壁なら日射で温められる時と冷える時、断熱なら室内外の温度差がある時、電気設備なら電流が流れとる時じゃ。

T h 06121824 ΔT > 0 ΔT < 0 浮き部 健全部
晴れた日の外壁の表面温度の模式図。浮いたタイルやモルタルは裏に空気の層があって熱が逃げにくいけぇ、日中は健全部より熱く(ΔT > 0)、夜は冷たく(ΔT < 0)なる。朝夕の入れ替わりの時刻は差が消えて見つけられん。
  • 向きで時刻を変える:日が当たる時間は面ごとに違う。東面は午前、南面は昼前後、西面は午後、と面ごとに計画する。日が当たりにくい北面は、温度差が出にくい。
  • 天気:前日に雨が降った、風が強い、曇りで日射が弱い、といった日は差が小そうなる。
  • 季節:断熱の欠けを見るなら、室内外の温度差が大きい冬の夜〜早朝。日射の影響が抜けた時間がええ。
  • 負荷:電気設備は、電流が多い時ほど異常な発熱が大きゅうなる。軽負荷の時に「異常なし」と言うのは危ない。

外壁の赤外線調査で、日照と反射を踏まえて撮影計画をどう組むかは、外壁の赤外線撮影を、日照・反射・品質確認から計画する(Airffic Flight Institute)に手順でまとめとるよ。

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用途ごとの見方

対象何が写る撮る条件主なわな
太陽光パネルセル割れ・バイパスダイオード故障・汚れや影によるホットスポット、つながっとらんストリング発電中、日射が強く安定(IEA PVPS の2018年の報告では600W/m²を超える日射を推奨)太陽・空の映り込み、見る角度
外壁タイル・モルタル浮き(日中は高温、夜は低温)面の向きに合わせた時刻、晴れて風の弱い日色・材質の違い、映り込み、目地、窓まわり
断熱・気密断熱の欠け、熱橋、漏気冬、室内外の温度差が大きい夜〜早朝日射の残り、室内の家具や暖房の位置
送電線・プラントの電気設備接続部のゆるみ・腐食による発熱負荷が高い時、相どうしで比べる金属の低い放射率、風による冷却、強電磁界
配管・タンク保温材の劣化、液面、詰まり中身と外気に温度差がある時保温材の外装(金属板)の映り込み

日本の建物の定期報告では、外壁タイルなどの全面打診が求められる場面がある。2022年1月の告示改正で、打診と同等以上の精度を持つ赤外線調査が、ドローンによるものも含めて方法として明記されたんよ。ただし「同等以上の精度」を出せる条件で撮れとることが前提じゃ。マンションの使い方はマンションで見られるよ。

電気設備では、絶対温度より同じ条件の相どうしの温度差で見るのが基本じゃ。三相のうち一つだけ接続部が熱いなら、それが手がかりになる。送電線の近くは電磁界が強いけぇ、機体側の対策も要る。強い電磁界

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ラジオメトリックと、非ラジオメトリック

熱画像カメラには、画素ごとの温度データを残す「ラジオメトリック」と、色付きの絵だけを残す「非ラジオメトリック」がある。点検の記録に使うなら、ラジオメトリック一択じゃ。

ラジオメトリック非ラジオメトリック
残るもの画素ごとの温度(または放射)データと撮影パラメータカラーパレットで塗った画像
後から放射率・反射温度・温度範囲を変えて再計算できる色の範囲は撮った時のまま
向いとる用途温度差の記録、報告、経年比較飛行中の見当付け、捜索、目視の補助
注意精度は仕様で±2℃または±2%程度のものが多い。条件の入力が要る色が同じでも温度が同じとは限らん(自動調整で範囲が変わる)

熱画像は画素数が少ない(例:640×512画素が主流)。例として画素ピッチ12µm・640画素・焦点距離13.5mmのカメラなら、GSD = センサー幅 × 撮影距離 ÷(焦点距離 × 画素数)で、30m離れて約2.7cmになる。温度を正しく測りたい点には、数画素四方(3×3画素ほど)は載せたい、とよう言われる。小さい接続部を遠くから撮ると、周りと平均されて温度が低う出るんよ。GSDの考え方は可視光カメラの章と同じじゃ。

Airffic の見立て

熱画像には、必ず同じ位置の可視画像と、撮影時の気温・湿度・日射・風・負荷を添えて残そう。条件のない熱画像は、数年後に誰も読めん。

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赤外線にできんこと

  • ガラスや金属の向こう:LWIRはガラスを通らん。窓の内側は見えん。磨いた金属の温度もほぼ測れん。
  • 深い所:見えるのは表面温度だけ。深い浮きや内部の空洞は、表面に温度差が出にくい。
  • 条件が悪い日:曇り・雨上がり・強風・日射の入れ替わり時刻では、異常があっても写らんことがある。
  • 原因の特定:「熱い」ことは分かっても、なぜかは分からん。ホットスポットの原因は、IVカーブ測定や現地の確認で詰める。
  • 「異常なし」の保証:写らんかったことは、なかったことの証明にはならん。
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2035年の見立て

2035年には、ドローンは天気予報と日射の計算から撮るのに一番ええ時刻を自分で選ぶようになっとるじゃろう。南面は昼、西面は午後と、面ごとに時刻を変えて飛び、放射率や反射温度は可視画像と3Dモデルから面ごとに自動で当てはめる。熱画像は部材ごとに年ごとに並び、温度差の変化だけが点検者の画面に上がる。編集部の見立てじゃが、方向ははっきりしとるんよ。

それでも、物理は変わらん。熱が流れん時刻には、何も写らん。条件を記録して、条件の整った日に撮る。その地味な段取りこそが、未来でも赤外線点検の中心にあるはずじゃ。

根拠を確かめる

制度・数値・事例は下の資料を参照しとる。未来像と設計の提案は、編集部の独自の見立てじゃ。

参照確認日: 2026-10-22