TECHNOLOGY / 04
レーダー|地面の下、煙の向こう、宇宙からの見守り
電波は、光が通らん所を通る。地中レーダーは道路の下の空洞を、ミリ波レーダーは煙や粉じんの向こうの障害物を、衛星のInSARは地面や構造物のmm単位の沈下を捉える。ほいでも、ドローンに積んで実用になっとるものは、まだ一部なんよ。成熟度を正直に分けて見ていこうや。
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レーダーは、何を見とるんか
レーダーは電波を出して、はね返りを受ける。はね返りが強うなるのは、電気的な性質(比誘電率)が急に変わる境目じゃ。空気と土、土と水、コンクリートと鉄筋。空洞は周りとの差が大きいけぇ、よう写る。電波の速さは材料の中で遅うなり、v = 光の速さ ÷ √比誘電率。深さはv × 往復時間 ÷ 2で求めるんよ。水の比誘電率は約80と大きく、湿り具合で速さががらっと変わるのが難しいところじゃ。
| 周波数 | 分解能 | 届く深さ | 主な使い道 |
|---|---|---|---|
| 低い(数十〜数百MHz) | 粗い | 深い(条件が良けりゃ数m以上) | 地盤、埋設物、空洞の大まかな把握 |
| 中くらい(数百MHz〜1GHz前後) | 中 | 浅め | 道路の路面下の空洞、舗装の層 |
| 高い(数GHz) | 細かい | 浅い(コンクリートのかぶり程度) | 鉄筋の位置とかぶり、床版の劣化 |
| ミリ波(数十GHz) | —(空中の物を見る) | 地中には入らん | 障害物の検知、高度計、煙の中の航法 |
地中レーダーで、道路の下の空洞を見る
道路の陥没の大きな原因の一つが、下水道管の破損じゃ。管の継ぎ目や割れ目から、雨や流れのたびに周りの土が管の中へ吸い出され、路面の下に空洞が育つ。表面は最後まで平らに見えることが多いけぇ、気づいた時には落ちるんよ。2025年に埼玉県八潮市で起きた大規模な道路陥没も、下水道管の破損が関わっとって、その後、国の要請で、口径2m以上の古い下水道管を対象に全国で特別な重点調査が行われた。
いま路面下の空洞調査で実用になっとるのは、車に積んだ地中レーダーじゃ。交通の流れに乗って走りながら広く探査し、怪しい所は小さな穴を開けてカメラで中を確かめる。ドローンの出番は、車の入れん所、川沿い・堤防・斜面、災害のあとの通れん道路、そして下水道管路の中を管内ドローンで見る方じゃ。
| 方法 | 成熟度 | 得意 | 限界 |
|---|---|---|---|
| 車載の地中レーダー | 実用 | 道路を広く速く | 車の入れん所、深い空洞 |
| 手押し・ハンディの地中レーダー | 実用 | 歩道、狭い所、確認の探査 | 遅い、人が要る |
| ドローン搭載の地中レーダー | 研究・実証 | 車の入れん所、危険な場所 | 高度を低く一定に保つ必要、精度の検証が少ない |
| 管内のカメラ・ドローン | 実用〜実証 | 管の破損そのものを見る | 管の外の空洞の大きさは分からん |
ドローンで地中レーダーを飛ばす難しさ
- 高さ:アンテナが地面から離れるほど、電波の多くが地表ではね返って中に入らん。ドローンでは地面すれすれを、一定の高さで飛ぶ必要がある。
- 重さとアンテナ:低い周波数ほどアンテナが大きい。深く見たいほど、ドローンに積みにくい。
- 土の条件:濡れた粘土や塩分の多い土は電波を強く弱める。同じ機材でも、場所で見える深さが大きく変わる。
- 位置合わせ:見つけた反応を地図に落とすには、cm単位の位置と高さの記録が要る。
- 読み取り:反応が空洞か、埋設管か、石か、土の層の境目かは、波形の形と経験で読む。誤報も多い。
じゃけぇ今のところ、ドローンの地中レーダーは「車も人も入れん場所で、大まかに当たりを付ける」道具と考えるのが現実的じゃ。積雪や氷河、地雷の探査などで研究が進んどって、点検の分野でも実証が増えとるんよ。
鉄筋とコンクリートの中
高い周波数の地中レーダーは、橋梁の床版やトンネルの覆工、建物の壁で鉄筋の位置とかぶりを測るのに、ハンディ型でようけ使われとる。床版の上を走る車載型で、舗装の下の床版の劣化を探る方法もある。ここは実用の技術じゃ。
ほいでも、これをドローンでやるのは難しい。正確に測るには、アンテナを面に密着させるか、ごく近くで一定に保つ必要がある。接触できるアームを付けたドローンで、壁や床版の下面に押し当てて測る研究はあるが、まだ研究・実証の段階じゃ。ドローンは、まず可視光や赤外線で怪しい所を探し、レーダーは人やロボットが近くで当てる、という分担が当面の姿なんよ。
ミリ波レーダー:煙と粉じんの中の目
ミリ波レーダーは、自動車の衝突防止でおなじみの技術じゃ。光より波長が長いけぇ、煙・粉じん・霧・暗闇を通して物体までの距離と速さが測れる。ドローンでは、農業用の散布ドローンが地形に沿って飛んだり障害物を避けたりするのに使われとる(例:レーダーを積んだ散布機)。
| 使い方 | 成熟度 | メモ |
|---|---|---|
| 障害物の検知・回避 | 実用(機種による) | カメラが効かん粉じん・霧の中でも働く |
| 対地高度の計測 | 実用 | 水面や作物の上でも高さが取れる |
| 煙・粉じんの中の自己位置推定 | 研究・実証 | LiDAR やカメラが見えん時の補い |
| 細い電線・枝の検知 | 限定的 | 小さく細い物は捉えにくい |
弱点は角度の分解能の粗さじゃ。何かがあることは分かっても、形まではよう分からん。じゃけぇ単独ではなく、LiDAR・カメラと組み合わせて、どれかが見えん時に残りが補う作りが基本になる。ボイラー・炉内や鉱山・坑道のような粉じんの多い現場で、特に期待されとるんよ。粉じん・煙
衛星InSAR:宇宙からmm単位の動きを見る
InSAR(干渉SAR)は、人工衛星の合成開口レーダーで同じ場所を何度も撮り、電波の位相の差から地表の動きを測る技術じゃ。多くの撮影を時系列で解析すると、地盤沈下や盛土、堤防、ダム、橋の周りのmm単位のゆっくりした変位が、広い範囲でまとめて分かる。欧州のSentinel-1(Cバンド、データは無料公開)、日本のALOS-2・ALOS-4(Lバンド)、民間の小型SAR衛星などが使われとるんよ。
| 衛星InSAR | ドローン点検 | |
|---|---|---|
| 範囲 | 都市・県単位を一度に | 構造物1つずつ |
| 分かること | ゆっくりした沈下・隆起の速さ | 表面の変状、形、温度 |
| 頻度 | 衛星の回帰で決まる(数日〜数週間) | 飛ばしたい時に |
| 苦手 | 衛星から見た方向の動きだけ、急斜面や高層ビルの陰、植生、急な変化 | 広い範囲を毎月は無理 |
InSARとドローンは、取り合う相手じゃのうてつなぐ相手じゃ。衛星で「動いとる場所」を広く見つけ、そこへドローンを飛ばして「何が起きとるか」を見る。広域の見張りと、近くの目。この組み合わせが一番強い。
空から「見せる」写真と、空から「測る」記録が、どこで枝分かれしたかは、空撮が見せる画と測る記録に分かれた歴史(Airffic Aerial)で読めるよ。InSARは、その「測る」側の末っ子みたいなもんじゃ。
レーダーにできんこと、2035年の見立て
- どんな土でも深く:濡れた粘土や塩分の多い土では、すぐ弱まる。
- 反応の正体の断定:空洞か、管か、石かは、掘って確かめるまで確定せん。
- ドローンでの近接計測:鉄筋のかぶりなどは、面に近づけて一定に保つ必要があり、飛びながらは難しい。
- 急な変化を衛星で:InSARはゆっくりした動き向き。数時間で進む崩れは、撮影の間に終わってしまう。
2035年には、衛星InSARが街全体の沈下を毎月見張り、動きが出た所に、車載レーダーと管内ドローンが優先して入る流れが当たり前になっとるじゃろう。ドローンの地中レーダーは、災害のあとの道路や堤防を素早く調べる道具として育っとるかもしれん。ミリ波レーダーは、煙や粉じんの中でも止まらん機体の標準装備になっとる見込みじゃ。これは編集部の見立てで、とくにドローンの地中レーダーは、まだ検証の積み重ねが要るんよ。
根拠を確かめる
制度・数値・事例は下の資料を参照しとる。未来像と設計の提案は、編集部の独自の見立てじゃ。
- 千葉県|下水道管路の全国特別重点調査の結果について(2025年9月17日)千葉県 県土整備部 下水道課 · 本文確認
- ESA: Sentinel-1 facts and figuresEuropean Space Agency · 本文確認
- JAXA|先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)宇宙航空研究開発機構 · 本文確認
参照確認日: 2026-10-22