ENVIRONMENT / RADIATION
放射線|人が近づけん場所で、ドローンとロボットは何を見てきたか
原子力発電所の廃炉、放射線を使う検査、天然の放射性物質がたまる配管。放射線は人の体だけじゃのうて、カメラや電子回路も壊していくんよ。福島第一の廃炉で積み上がった経験をもとに、何ができて何ができんのかを整理しようや。
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何が起きるんか
放射線(とくに透過力の強いガンマ線)は、人の細胞と同じように、半導体の中でも電荷をつくって悪さをする。被害には2種類ある。浴びた総量が積み上がってだんだん性能が落ちるもの(累積線量の影響)と、粒子が当たった一瞬にデータが化けたり誤作動したりするもの(シングルイベント効果)じゃ。ドローンは小さく軽くつくるために、民生用の電子部品を使う。これが放射線には弱いんよ。
| 部位 | 起こること | 現場での見え方 |
|---|---|---|
| カメラ(イメージセンサー) | 画素に電荷が生じる、暗電流が増える、やがて画素が死ぬ | 映像に白い点やノイズが散る、だんだん暗く・粗くなる |
| 制御基板・メモリ | ビット反転、誤作動、累積による劣化 | 突然のリセット、通信切れ、操縦不能 |
| センサー類(IMU・LiDAR 等) | 検出素子の劣化、誤差の増加 | 位置の推定がぶれる |
| 電池・配線・樹脂部品 | 比較的強いが、高線量では材料が劣化 | 長期の使用で被覆が硬く・もろくなる |
| 機体の表面 | 放射性物質の付着(汚染) | 持ち出せず、使い捨てになることがある |
越える技術
| 技術 | しくみ | 強み | 弱み |
|---|---|---|---|
| 線量率マップづくり | 線量計・ガンマカメラを積み、場所ごとの線量を測って地図にする | 人が入る前に「どこが高いか」が分かる | 機体の位置精度が地図の精度を決める |
| 耐放射線の部品・設計 | 耐放射線用の素子、冗長化、電子回路を線源から離す配置 | 長く持つ | 高価、選べる部品が少ない |
| 画像のノイズ除去 | 連続するフレームを比べ、放射線による白い点を消す | 既存のカメラで見やすくなる | 強すぎる線量ではセンサーそのものが死ぬ |
| 有線(テザー)・ケーブル給電 | 電源と通信を線でつなぐ | 電池切れ・電波切れがない、回収できる | ケーブルが絡む、届く範囲が限られる |
| 水中ロボット(ROV) | 水を張った格納容器の中を泳いで調べる | 水が遮へいの代わりになる | 濁り、狭い開口からの投入 |
廃炉の現場では、空を飛ぶ機体、床を走るロボット、伸びるアーム、水中を泳ぐロボットを組み合わせる。飛ぶ機体は速く広く見られるが、重い物を運べず、長くは居られん。役割を分けて使うのが、これまでの経験から出てきた答えなんよ。
どの現場で出会うか
一番大きい現場は、東京電力 福島第一原子力発電所の廃炉じゃ。2011年の事故の後、原子炉建屋へ最初に入ったのは遠隔操作の地上ロボットじゃった。その後、格納容器の中は、走るロボット・伸びる調査装置・水中ロボットで少しずつ調べられ、燃料デブリとみられる堆積物が確認されてきた。近年は、格納容器の中を小型ドローンで飛んで調べる調査も行われとる(2024年2月、1号機で小型ドローン2機がペデスタルの外側を撮影)。2024年11月には、2号機からごく少量の燃料デブリを試験的に取り出すところまで来たんよ。
ほかにも、稼働中や廃止中の原子力施設の点検、加速器や研究施設、配管の溶接部を放射線で透かして見る放射線透過試験の現場、石油・ガスの生産設備や一部の鉱山で天然の放射性物質(NORM)がスケールとして溜まる配管・貯槽・プラントで出会う。屋外では、事故後の広い地域の空間線量を、無人ヘリなどの無人機で測る取り組みも続けられてきたんよ(たとえば原子力機構は2016年に、発電所から5km圏内を無人ヘリで測っとる)。
機体と運用の選び方
- 線量の見積もりから始める:調べる場所の線量率と滞在時間から、機体の電子部品が耐えられる累積線量を見積もる。カメラが先に死ぬことが多い。
- 「使い捨て」も選択肢に入れる:汚染された機体は外へ持ち出せんことがある。回収・除染・保管・廃棄まで最初に決めておく。
- 狭い開口からの投入を前提にする:格納容器などへは、既存の貫通部や小さな穴から入れることになる。機体の大きさ、ガード、テザーの取り回しを、模擬設備で練習してから本番へ。
- 非GPS・暗所・通信切れをまとめて考える:建屋の中は衛星も電波も届きにくく、真っ暗じゃ。照明、中継、テザー、通信が切れた時の動作を決める。
- 記録に線量と時刻を残す:映像の劣化が「対象の変化」なのか「センサーの劣化」なのか、後で見分けるためじゃ。
安全と法規
日本では、原子力施設は原子炉等規制法のもとで原子力規制委員会が規制し、働く人の被ばくは電離放射線障害防止規則(電離則)などで管理されとる。放射線業務に従事する人の線量限度は、5年で100mSv、かつ1年で50mSvじゃ。ドローンは人の被ばくを減らす道具じゃが、操縦者や回収する人の被ばくも計画に入れる必要がある。管理区域に持ち込んだ機材は、持ち出す時に汚染の検査を受けるんよ。
原子力施設の上空や周辺は、重要施設として飛行が制限されとることが多い。屋外の飛行には航空法の飛行ルールも効く。関連:非GPS環境、暗所、狭小空間、各国の規制。
まだ越えられん壁
- 高線量下での長時間の作業:カメラも基板も、浴びた分だけ確実に寿命が減る。数時間居座って作業する機体は、まだむずかしい。
- 飛びながら重い物を扱う:燃料デブリの取り出しのような作業は、飛ぶ機体では無理じゃ。ドローンは「見る・測る」役が中心のまま。
- 汚染された機体の後始末:回収できん機体が現場に残れば、それ自体が次の作業の邪魔になる。
- 位置と線量を正確に結びつける:暗く衛星のない建屋の中では、線量マップの位置精度そのものが課題じゃ。
2035年の見立て
耐放射線の小型カメラと基板が安くなり、建屋に入るたびに機体が線量マップと3Dモデルを更新しとる。作業員が入る前の日には、必ずドローンが「今日の線量」を測って道を示す。じゃけど、デブリを取り出すのは相変わらず重いアームと地上のロボット。空を飛ぶ機体は「人とロボットの目」として働き続ける——廃炉は何十年も続く仕事じゃけぇ、その積み重ねが一番の資産になる、というのが編集部の見立てじゃ。
根拠を確かめる
制度・数値・事例は下の資料を参照しとる。未来像と設計の提案は、編集部の独自の見立てじゃ。
- 東京電力|福島第一 1号機 原子炉格納容器内部調査(小型ドローン、2024年2月28日)かべ新聞東京電力ホールディングス · 本文確認
- 東京電力|2号機 燃料デブリの試験的取り出し作業の状況(2024年11月7日)東京電力ホールディングス · 本文確認
- 技術研究組合 国際廃炉研究開発機構(IRID、2026年9月30日解散)IRID · 抄録確認
- 原子力規制委員会原子力規制委員会 · 抄録確認
- e-Gov 法令検索|電離放射線障害防止規則(昭和47年労働省令第41号)デジタル庁(e-Gov) · 本文確認
- 日本原子力研究開発機構|無人ヘリによる東京電力福島第一原子力発電所から5km圏内の空間線量率分布の測定日本原子力研究開発機構 · 本文確認
参照確認日: 2026-10-22